民法の「親族」と戸籍の請求資格
民法第725条は、6親等内の血族、配偶者、3親等内のを親族としています。一方、戸籍法第10条が本人等として請求を認めるのは、その戸籍に記載されている人と、その配偶者、・です。二つの条文は目的も範囲も異なります。
「親族なのだから、全員の戸籍が自由に取れる」とは読めません。まず請求する戸籍に自分が記載されているか、そうでなければ記載された人とどの関係にあるかを確認します。対象の人と同じ姓か、同居しているかだけではは決まりません。
直系・傍系と、尊属・卑属
直系は、親・祖父母へさかのぼる、又は子・孫へ下るように、世代を通じて直接つながる関係です。傍系は、兄弟姉妹やおじ・おばのように共通の祖先から枝分かれする関係です。尊属・卑属は、その関係の上の世代・下の世代を表します。
配偶者は直系親族に含めて説明せず、配偶者という独立した関係として整理します。また、配偶者の父母は自分の父母と同じ請求資格にはなりません。戸籍法上の直系の資格を考えるときは、血族としてのつながりを確認します。養子縁組による法的な親子関係も含まれます。
| 自分との関係 | 区分 | 戸籍請求を考えるとき |
|---|---|---|
| 父母・祖父母 | 直系尊属 | 本人等の資格がある |
| 子・孫 | 直系卑属 | 本人等の資格がある |
| 兄弟姉妹 | 傍系血族 | 別戸籍では関係だけを理由に本人等の資格は生じない |
| 夫・妻 | 配偶者 | 直系とは別に請求資格が定められる |
| 配偶者の父母 | 姻族 | 自分の直系の資格と同一には扱わない |
親等は世代数で数える
民法第726条は、親等を親族間の世代数で数えると定めています。親と子は1親等、祖父母と孫は2親等です。兄弟姉妹は、自分から親へ1世代、親からきょうだいへ1世代と数え、2親等になります。おじ・おばは3親等、いとこは4親等です。
親等が近い人から順に戸籍請求が許される、という制度ではありません。きょうだいは2親等でも直系ではなく、曾祖父母は3親等でも直系です。距離を表す親等と、つながり方を表すを分けて理解する必要があります。
養子縁組も法律上の親族関係を作る
民法第727条は、養子と養親及びその血族の間に、縁組の日から血族と同一の親族関係が生じると定めています。血がつながっているかという日常語だけでは、法律上の直系関係を説明しきれません。
一方で、離縁や特別養子縁組など、関係の終了に別の規定がある場面もあります。以前親子として記録されていたという一事だけで現在の請求資格を判断せず、縁組・離縁の経過と、請求対象の戸籍との関係を確認します。
具体例
結婚して戸籍が別になった兄の戸籍を、弟なら取れる?
きょうだいであることだけでは、兄の新しい戸籍について本人等の請求資格は生じません。兄から委任を受けて通常のをする方法や、自分の相続手続きなどの具体的な必要がある場合のを検討します。ただし、自分も記載されていた親の戸籍を請求する場合は、自分の記録を含む戸籍として請求できる場合があります。
夫に頼まれ、夫の父の戸籍を取りに行きたい
夫は父の直系卑属ですが、妻はその資格を当然には共有しません。妻自身に別の請求資格がない場合は、夫から委任を受ける通常の代理請求として整理します。代理人の本人確認と委任の確認が必要で、委任状があってもによる代理請求はできません。
判断の分かれ目
現在の資格と、過去の戸籍に自分が載っていること
離婚によって元配偶者という関係だけで相手の新しい戸籍を本人等として取れるわけではありません。一方、自分が記載されていた婚姻中の戸籍については、戸籍から除かれた人も含む第10条の規定が関係します。人同士の関係だけでなく、どの戸籍を請求するかを特定することが重要です。
根拠法令
民法
第725条・第726条
親族の範囲と親等の計算方法を定めます。戸籍交付の資格を直接定める条文ではありません。
原文を読む民法
第727条・第729条
養子縁組による親族関係の発生と、離縁による終了を定めます。
原文を読む民法
第817条の9
特別養子縁組による実方との親族関係の終了と、その例外を定めます。
原文を読む戸籍法
第10条第1項
本人(一定の除籍者を含む)・配偶者・直系尊属・直系卑属に請求資格を認めています。
原文を読む関連用語
- 父母・祖父母など、自分から直接さかのぼる法律上の親族。
- 子・孫など、自分から直接下る法律上の親族。
- 婚姻によって生じる、配偶者の血族などとの関係。